インタビュー 四元正弘コラム

マーケティングのゴールって?◆四元正弘の『心』を動かすマーケティング談義 第2回◆

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マーケティングと心理学のカンケイって?顧客ニーズってどうやったらわかるの?社会情報大学院大学の四元正弘教授とマーケティングや消費者心理について考える企画がスタート!今回は第2回です。

公開予定

●第1回
マーケティングと心理学のカンケイって?~人が商品を選ぶ心理を知る

第2回
マーケティングのゴールって?~その顧客設定、ほんとに大丈夫?

●第3回
『共感マーケティング』のススメ。~消費者の心に火をつける「物語」の作り方

四元正弘プロフィール

1960年神奈川県生まれ。
サントリー(株)でワイン・プラント設計に従事し、発明協会賞を受賞。1987年に電通に入社。メディアビジネスの調査研究やコンサルティング、消費者心理分析に従事。2013年3月に電通を退職し独立、現在は四元マーケティング研究室代表であり、2019年4月から社会情報大学大学院で教授も務めている。

詳しくはコチラ

 

第2回「マーケティングのゴールって?」~その顧客設定、ほんとに大丈夫?

マーケティングにおける「弱い差別化」と「強い差別化」

ー今回も四元さんに、マーケティングや消費者心理についてお聞きしていきます。前回は、マーケティングや心理学の歴史をたどりながら、人が商品を選ぶときのプロセス「ヒューリスティック」について解説いただきましたが、実際に企業はどのように消費者にアプローチしていけばよいのでしょうか。

基本的にマーケティングのゴールは、「差別化」です。差別の中にも、大きく分けると「弱い差別化」と「強い差別化」の2つがあります。

 

―「弱い」と「強い」それぞれどのようなものですか?

まず「弱い差別化」というのは「改善・改良」や「クレーム対応」をベースにしたものです。

例えば、ライバル会社の商品がほんの少しの機能を改善したら、それをほんの少し超えるような改善・改良を行うようなことです。プロモーションにおいても、他社がポイント20%還元しはじめたらこちらは25%還元する、そのような差別化です。

「強い差別化」というのは、「弱い差別化」のような過去に対して改善を繰り返すものではなく、「過去との非連続性」をもった「自分の立ち位置を作る」差別化です。

 

―分かるような、分からないような…

この2つは日本語だと同じ「差別化」という言葉になりますが、英語で考えると別の単語になります。
弱い差別化である「改善・改良」は「ディファレンシエーション(differentiation)」つまり、「区別・違い」をつくることですね。

一方、強い差別化は「ポジショニング(positioning)」です。

「ポジショニング」というのは「自分の立ち位置を作ること」、「他とは違うところに立つ」ということなので、区別することとは違います。

日本だとこの2つを一緒にしがちですが、明らかに性質が違います。

 

―「弱い」差別化は、なにが問題なのでしょうか。

問題というか、日本のマーケティングは「弱い差別化」を気にしすぎだと思います。例えば「成功事例」とか。

 

―心当たりあります…。

「成功事例」を勉強すること自体はいいことですよ。ただ、全員がその成功事例を目指したら、全員同じものになってしまいます。そうすると「弱い差別化地獄」が生まれます。そして、「弱い差別化」の最後はコモディティ化が待っています。

 

―「強い差別化」のためには、どうすればいいんですか?
成功事例ではなく、「自分の強みを生かす」という発想がすごく重要ですよね。自分の強みを知って、自分だけの立ち位置を作る、その発想が日本のマーケティングは弱いと思います。

生活者の心理を先回りして感じ取って、商品をつくるときに、今はこういう心理傾向があるから、自社の強みを生かしたこういう商品が成功するかもしれないと賭ける覚悟をもつことですね。

 

顧客設定・ニーズ設定大丈夫?

 

「モテたい」はニーズではなく、最終的なゴール

―ただ今ある商品をなんとか売らなければならない、なんとか差別化しなければならないという方も多いと思います。その場合から「自分の強みを生かす」には、どのように消費者にアプローチしたらよいのでしょうか。

商品は売れないのは、だいたい「顧客ニーズ設定」が間違っていることに原因があります。
例えば「モテない」という悩みがある人がいるとする。その人のニーズってなんだと思いますか?

 

―「モテたい」ですか‥?

違います(笑)しかし、長年マーケティングや広告業界にいる人たちでもそう思っている人はとても多いです。

 

―では「モテない」人のニーズって何ですか?

まず「モテたい」がニーズではないとすると、それがなんなのか。
答えから言うと、「モテたい」というのは“ゴール・目標”です。

「モテない」の逆は「モテる」ですよね。「モテない」現実から離れた場所にある「モテる」状況に対して、「モテたい」というゴール・目標を持っているだけです。

では、ニーズがその中のどこにあるのかというと、「モテない」現実と「モテたい」ゴールとの間にある「ギャップ」の中です。

「モテない」現状と「モテたい」目標との間には、その人が克服しなければならないギャップがあります。
理想と現実のギャップを解消するために、「今自分は何がしたいのか」「何が足りないのか」「だから何をすべきなのか」そのような疑問の答えがニーズです。
人は、そこに気付いたときにはじめて「行動」します。

 

―商品の必要性を伝える、気づかせるためには、このギャップにある行動をどう促すかが重要になってくるんですね。

そうです。例えば「モテない」悩みの本質には色々なニーズがあります。
注目を浴びたい、目立ちたいなど顕示欲求から、たくさんの人と遊んで楽しみたいなど娯楽的な欲求や、性的・生理的な欲求などです。

「痩せられない」悩みには、好きな服を着たい、憧れのあの人みたいになりたい、人からちやほやされたい、自分に自信が欲しい、人に認められたい、健康的な生活をしたい、などの欲求があります。

このようにみてみると、必ずしも「モテる」「痩せる」ことだけが、このニーズを満たしてくれるものではないことが分かると思います。

つまり、本質的なニーズには本人も気づいていないことが多く、だからこそいかに広告などのコミュニケーションから引き出せるか、自分たちの強みと結びつけられるかが重要になってきます。

「モテたい」はニーズではなくゴールなので、そこを直接的に訴求しても行動には直接結びつけられません。行動に結びつけて消費者を誘導するには、消費者が何をすればいいのかという答えを見つけられるように、自社の商品の強みを用いてひき出すことではじめて可能になります。

 

行動を促すには、現実と理想の間にあるギャップ(ニーズ)に気付かせて、自分の強みを魅力的に見せること。
分かっていそうで、意外とうまくニーズ設定ができてない人もいるのではないでしょうか。
第三回は「『共感マーケティング』のススメ。~消費者の心に火をつける「物語」の作り方」です。今回の「顧客ニーズ」を正しく理解した上で、より強い差別化を作るマーケティング手法「物語マーケティング」について詳しくとりあげてます。お楽しみに!

 

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