自社商品・ブランドのWebサイトの方向性や企画を考えるとき、どんなコンテンツを載せたらいいか分からず中々「これだ!」と思うものに決められないことはありませんか?
Webサイトに必要なのは「ターゲットの欲しい情報が載っている」ことです。
今回はアメリカの消費者行動研究者ヘンリー・アサエルが提唱した『購買行動類型』をもとに、4パターンの消費者が「欲しい情報はなにか」・それを表現するために必要なサイトコンテンツはなにかを解説していきます。
自社ターゲットが4つのパターンのどれに近いかを考えながら読んでくださいね。
購買行動類型とは?
「購買行動類型」とは、「関与水準」と「ブランド間の知覚差異」の2軸のマトリクスで、消費者の購買行動を4パターンに分類した理論です。
●関与水準
……製品そのもの・購買行動に対する「関心・こだわり・思い入れ」の強さを意味する軸
・「高関与商品」ほど「高価格で耐久性がある(購買頻度が低い)・自己表現手段になる」の特徴がある
・「低関与商品」ほど「安価で耐久性がない(購買頻度が高い)・こだわりが弱い」の特徴があります。
●ブランド間の知覚差異
……「同じカテゴリー内のブランド間(各商品間)の違い」を認識できているかの軸。
・ブランド間の知覚差異が大きいほど、「その商品カテゴリーについての知識・情報が多い傾向」や「ブランド間の見た目・性能の違いを見分けられる。
この2軸の組み合わせから「消費者の購買行動の4パターン」が生まれます。自社商品のターゲットは、次の4つのうちどのタイプに近いでしょうか?
a-情報処理型(複雑型)
パターン
関与度 高 ×ブランド間知覚差異 大
商品例
自動車・パソコン・高級時計・一眼レフカメラ・楽器・ブランド品など
購入のプロセス
「認知→評価→行動(類似製品との比較・検討)→購入」を行う複雑な購買行動。
製品への関心・こだわりが強くて、製品のブランド間の違いを認識できるので、十分な情報収集と比較検討をし納得の上、購入が行われる。
効果的なアプローチ
比較対象製品と自社製品(自社ブランド)の優位性・長所・魅力を分かりやすく示す。
例:クルマ(高級外国車)
●TOPページ
ブランドロイヤリティを高めるような、大きく解像度の高い「写真・動画」を掲載しメインビジュアルを目に焼き付かせたり、クルマのブランドイメージに欠かせない「ロゴ(エンブレム)」を強調し世界観へ引き込んだりしています。
●商品ページ
情報処理型の商品を購入するターゲットは「他社ブランドとの入念な比較・十分な情報収集」を行う傾向があるので、商品ページは「商品の良さを説明する情報量」を網羅的にする必要があります。
例えば、「エクステリアとインテリアのデザイン(写真つきの詳細な説明)」と「モデルラインナップとスペック(仕様)」を写真つきで詳しく説明したり、「走行性能・安全性能・価格」を具体的な数字で示しています。
●行動の誘導
比較・検討したい情報処理型へ次の行動を誘発する「カタログのDLや請求・シミュレーション・試乗予約」をワンステップでできるようにしています。
※画像出典:アウディジャパンHP(https://www.audi.co.jp/jp/web/ja.html)、メルセデス・ベンツHP(https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars.html)
b-バラエティ・シーキング型
パターン
関与度 低 ×ブランド間知覚差異 大
商品例
ポテトチップス(お菓子類)・清涼飲料水・プチプラコスメ・缶コーヒー・サラダドレッシングなど
購入プロセス
ブランド間の違いは認識しているものの、製品そのものへの関心・こだわりが弱いため、消費者は色々な別の種類の商品を買う「ブランドスイッチ」を頻繁に行う。商品を通じてできるだけ多様な経験(新商品の試し買い)をしようとする。
効果的なアプローチ
商品のバラエティを増やし、そこに関心を持たせて自社商品のファンにして囲い込む。
例:プチプラコスメ(ドラッグストアなどに売っているブランド)
バラエティ・シーキング型のサイトは、「商品のバラエティの多さを直感的に認識させる」や「ブランドスイッチを予防する差異化(イメージキャラ・個性的なWebデザイン)」ことがポイントです。
●バラエティの多さ
「キャンペーンや限定商品」「新商品」を目立つ場所に配置。また「ベースメイク・アイメイク・リップなどのバラエティの多さ」が直感的に分かるような商品一覧とページへのリンクを作っています。
●ブランド間差異の強調
バラエティ・シーキング型は、ブランド間の知覚差異が小さくて差別化しにくいのが特徴。そのためプチプラコスメ領域では「CMのイメージキャラクター(芸能人)」を推してブランド間差異をできるだけ強調しています。
※画像出典:キャンメイク(https://www.canmake.com/)、KATE(https://www.nomorerules.net/)、インテグレート(http://www.shiseido.co.jp/ie/)
c-不協和解消型
パターン
関与度 高 ×ブランド間知覚差異 小
商品例
家電(エアコン・冷蔵庫・洗濯機・掃除機)・貴金属やアクセサリー・高級品のカーテンやカーペットなど
購入プロセス
製品に対する関心・ニーズは高いのに、ブランド間の機能・品質の違いが分からないので、「この製品を買っても本当に大丈夫だろうか?もっと良い商品があるのでは?」という認知的不協和の不安を感じやすい購買類型です。
効果的なアプローチ
消費者の持つ各種の不安を広告・口コミで事前に取り除く、購入後に安心させる手厚いアフターフォローを行う
例:冷蔵庫
●ブランド間差異はイメージキャラクターで訴求
不協和解消型の商品を代表する「冷蔵庫」のWebサイトでは、製品そのもののブランド知覚の違いを強く訴えることが難しくなります。
そのため日立・三菱電機・パナソニックなど大手電機メーカーは、CMと連動した芸能人(有名人)の写真や動画をWebサイトにも掲載し、ブランド間差異をつくりだしています。さらに、CMでつくり上げたブランドイメージから商品そのものへの安心感・信頼性を提示し、ポジティブなイメージを強める「ハロー効果」にもつながっています。
●信頼を高める記事コンテンツ
お役立ち情報などの記事型コンテンツは、商品の違いがわからず比較的検討時間が長くなる不協和解消型に対して「検索」からコミュニケーションのアプローチをとれる方法です。

日立
●口コミ・購入者の声
価格は高めなのに具体的なブランドの違いが良く分からない不協和解消型の製品を扱うWebサイトでは、ターゲットの不安を弱めるために「口コミ・購入者の声のページ」をつくり購買意欲を高められます。

三菱電機
●アフターフォロー
アフターフォロー(リアルタイムなチャットなど)を充実させることで、購入後の顧客の安心・信頼だけでなく、購入前のターゲットの持つ不安・迷いを弱めて購買に向けて背中を押しています。

Panasonic
※画像出典:HITACHI(https://kadenfan.hitachi.co.jp/rei/)、MITSUBISHI(https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/reizouko/)、Panasonic(https://panasonic.jp/reizo/)
d-習慣購買型
パターン
関与度 低 ×ブランド間知覚差異 小
商品例
トイレットペーパー・ティッシュペーパー・歯ブラシ・サランラップ・塩や砂糖など
購入プロセス
製品への関心・こだわりがなくて、ブランド間の違いも認識していないため、消費者は「今までと同じ無難なブランド(製品)を習慣的に購入する行動」を取ります。
効果的なアプローチ
習慣購買型の典型的な製品は、コモディティ化が限界に達した商品も多く、「商品のブランド間差異の打ち出し」が難しくなっています。
そのため「価格戦略(安売り)」と「目立ってアイキャッチする売り場・広告」、「リピート客が使いやすいECサイトのルーチン(簡単な購入手順)構築」など「価格競争の優位・認知度や露出率の上昇・リピーター獲得」が重要になってきます。
例:ティッシュ
実店舗での購入が多い習慣購買型の刺さるサイトづくりは一般に難しくなります。Webサイト経由の認知や購入の数は限られるため載せるべき要素もそこまで特別なものはありません。
「他店よりも安い価格を強調する広告」の掲載や「リピート率の高さを伝える口コミ(購入者の声)」が有効です。
●販売チャネルの確保
ティッシュのようなコモディティは、Amazon・楽天などのECポータルに出店して販売チャネルを広げると同時に、プライスダウンを強調するWebサイトの宣伝に効果があります。
実店舗のスーパーやドラッグストアの視認率の高い棚・場所に置かせてもらう販促が重要です。
●新規ポジショニング商品の企画開発レベルの話になりますが、コモディティ化したティッシュ市場に対して「高級ティッシュ(低刺激で好感触)・鼻セレブ」や「実用性より見た目のカラーティッシュ(and Kami)」のように、新規市場開拓(新規ポジショニング)も行われています。
※画像出典:Amazon(https://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/hpc/170647011)、and kami(https://www.daishowa-first.com/)
まとめ
アサエルが定義した「情報処理型・バラエティ・シーキング型・不協和解消型・習慣購買型」の購買行動の4パターンから、それぞれに合ったサイトの作り方を紹介してきました。
購買類型の製品特徴やターゲットの消費者心理を的確に分析できれば、「ターゲットに刺さるサイトづくり」の企画やコンテンツの方向性を定めやすくなります。
自社の製品・サービスが4パターンのどれに該当するのかを考えて効果的なWebサイトをつくってみてくださいね。