人気テレビシリーズに「世にも奇妙な物語」があるが、マーケティングの世界でも勝るとも劣らない怪奇現象がおきることがしばしばある。しかもフィクションではない。現実に・・・。
実際にあった「コカ・コーラ対ペプシコーラ」そのひとつの戦い
それは1980年代の米国でのことです。
当時、新興のペプシがコカコーラに対して、飲み比べてどちらが美味しいかを街行く人に答えてもらう味覚競争を仕掛けた結果、大半が「ペプシの方が美味しい」と回答した。
そこで焦ったコカコーラは慌てて新商品開発に着手し、期待の新製品「ニューコーク」を完成させて、ブラインドテストを実施。今度は「ペプシと比べてニューコークの方が美味しい」と感じる人が多かった試飲結果に自信を得て、満を持してニューコークに全面リニューアルした。
コカコーラ社員は、さぞや心中でガッツポーズを取ったことだろう。しかし、ここでマーケティング版「世にも奇妙な物語」が起きる。いざ市場に投入したら「前の方が美味しかった」「何故わざわざ不味くしたのか」と非難が殺到したのだ。
その結果、前製品を「コカコーラ・クラシック」として復活せざるを得ず、期待されたはずのニューコークは数年後に哀れ生産中止に追い込まれた。繰り返すが、これは史実である。そして今でも十分に起こり得る、笑えない話なのです。
客観的に美味しいはずなのに、不味く感じる。言うまでもなく錯覚であるが、舌ではなく、脳の錯覚である。
タネ明かしをすると、これは「希少性の法則:人は希少性を感じた対象の価値を高く感じてしまう」という心理ルールが薬物ドラッグのように脳に働きかけた結果の幻想に過ぎません。
全面リニューアルしたために前製品の希少性が急激に高まって、その評価を不当に押し上げただけのだ。併売するとか、ブランド名を変えずに時間をかけて新旧の味を交換するという施策が正しかったのだろうが、それはタラレバの話。教訓とすべきは「心理ルールの威力を甘く見てはいけない」ということ。
強力な心理ルール、使い方を悪用すると…
ところが、真面目な、言葉を変えると正統派のマーケターほど、心理ルールを無視する傾向がある。
しかし、その気持ちも判らないわけではない。心理ルールは、その威力ゆえに使用モラルも厳しく問われます。心理ルールを悪用する典型例が、いわゆる悪徳商法なのだから。
スターウォーズに例えれば、心理ルール=フォース。それを正しく使うか、悪用するかはマーケター次第です。つまり悪徳商法とは、その使い方を間違ってフォースの暗黒面に落ちたダースベイダーだと思えばよい。
Webマーケティングにこそ心理ルールが効果が大きい
前述のコーラ事件はリアル店舗でのでき事だが、Webマーケティングの方が心理ルールの効果がさらに大きいと考えられる。何故なら、Webの方が商品の世界観を作りやすく、情報訴求力が強くなるからだ。
事実、知り合いのECバイヤーが言うには「あるハーブティのキャッチフレーズを“ダイエット”から“デトックス”に変えた途端に10倍の売上になった」とのこと。デトックスという単なる言葉が顧客心理を大幅に改善した結果だが、このように言葉一つ、ビジュアル一つを変えただけで劇的売上アップを実現できた成功事例はいくらでもある。
このように、Webマーケティングと心理ルールの相性はかなり高いわけだ。
最後に
さて今回が、私が投稿する記事の第一号。これからも隔月ペースで、私の実体験を含めてマーケティングの現場で起きた「世にも奇妙な物語」を心理ルールで謎解きをしたり、Web展開のヒントを紹介していこうと思う。
源氏物語のような古いストーリーが今でも楽しまれているように、人の心は昔も今もそんなに変わらない。心理ルールを知り、さらには活かすノウハウは一生の宝となると思いますよ