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「ポツンと一軒家」が現代人の心に刺さる理由~「極端性回避の法則」と「アドラー心理学」で説くと・・・

投稿日:2019年9月17日 更新日:

最近、テレビ朝日系列で放送中の『ポツンと一軒家』が大人気である。
失礼な言い方だが、ここまで高視聴率を稼ぐとは、関係者も想定していなかったのではなかろうか。

同番組はタイトル通りに、衛星写真で発見した人里離れた場所にポツンと存在する一軒家をアポなしで訪ねて、どのような人が、どのような理由で、どのような暮らしをしているのかをルポするリアリティ系バラエティ番組だ。

テレビ離れが叫ばれる現代において、同番組が多くの生活者から支持される理由とは何だろうか。
今回は心理学的視点で考えてみたい。

 

他人の極端性は極上のエンタテイメント

心理学でよく知られる現象に「極端性回避の法則」がある。

日本では「松竹梅の法則」とも称されるが、これは「3つ以上の選択肢がある場合、真ん中もしくは中間的な選択肢が選ばれやすい」という傾向を指す。

とは言え、積極的に真ん中・中間的なものを選ばれるという訳では決してない。
端っこを選択するリスクを無意識に感じて避けるために起きる現象だと考えられている。

卑近な例として、食堂の「大盛・普通盛・小盛」のメニューを挙げよう。
この場合、「大盛は量が多すぎて食べきれないかもしれない」「小盛は量が少なすぎてガッカリするかもしれない」と本能的に感じて、ついつい普通盛を頼んでしまう心理が「極端性回避」である。
特に、初めて入店したなどで盛り具合がわからない場合ほど、この傾向が強く出るものだ。

しかし、もしも隣に座った人が「大盛、ひとつ!」と注文するとどうだろう。
「大盛ってどれだけの量なのだろう?」と興味津々になるのも、人の常でなかろうか。

つまり、自分で極端性リスクを取る事態は回避するものの、自分と無関係なら極端性は「ドキドキハラハラ」のエンタテイメントになるということ。どことなく、「他人の不幸は蜜の味」にも相通じるものがありそうだ。

さて、ここで改めて「ポツンと一軒家」を考えてみよう。
人里離れた一軒家に住み続ける人生は、ハッキリ言って、かなり極端だ。
もしも人生の岐路に立ったときに、「ポツンと一軒家」暮らしがその選択肢の一つだったとしても、大半の人は極端性回避の法則に従って選ばない。いや、無意識的防衛が「リスクが高すぎる」と警告するので選べない。

しかし、実際にその一軒家に住み続けるのは自分とは無関係な人であるがゆえに、極端性は極上のエンタテイメントに昇華することになる。私はこの点に、同番組の人気の第一要因を見出したい。

 

アドラー心理学的な福音

それに加えて、第二の人気要因として注目したいのは、「暮らし方は確かに極端」だが、「暮らしている人自身はいたって普通」というギャップの妙である。

いや、より正確に言うと、普通の人が「過去や宿命に抗わずに淡々と暮らす」生き様に、あるいは「人は人、自分は自分」的な清廉な人生観に対して深く共感できることが同番組の最大の魅力ではなかろうか。

現代人の多くは、日本社会や自身の明るい未来像を展望できないままに、閉塞感や歯がゆい思いを抱えながら生きている。そしてついつい、他人と自分を比較して一喜一憂してしまう。

もしもマスメディアでこの手の重たいテーマを扱うとすれば、著名人やご意見番的芸能人(苦笑)が上から目線的な意見を開陳するスタイルになりがちだ。

しかし、「ポツンと一軒家」に登場する住人はいずれも、他人と比較することなく、またあり得たかもしれない別の人生(パラレルワールド)と比較した損得などを考えることなく、自分なりの生き方を貫いているだけで、そこには上から目線も卑下も一切ない。

この姿勢は、ザクっと言えば「自分の責任で自分の人生を選択しなければいけない」「そうすればシンプルで素晴らしい生き方になる」と説くアドラー心理学と通底しているようにも感じる。

もしこの着眼が正しいとするならば、自分探しや人間関係でストレスを溜めている人にとって、「ポツンと一軒家」は福音として機能するはずだ。まさに、ありがたや~、である。

 

「他人の極端性は極上のエンタテイメント」に加えて、「アドラー心理学的な福音」という二重の意味で、「ポツンと一軒家」は極めて稀有な価値を有しているのではなかろうか。

その凄さは並みのバラエティ番組の比ではない。高視聴率も納得だ。

 

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四元 正弘(四元マーケティングデザイン研究室)

四元マーケティングデザイン研究室 代表
1960年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業。
サントリー(株)でワイン・プラント設計に従事し、発明協会賞を受賞。 1987年に電通に転職。メディアビジネスの調査研究やコンサルティング、消費者心理分析に従事する傍らで筑波大学大学院客員准教授も兼任。
2013年3月に電通を退職し独立、現在は四元マーケティング研究室代表を務める。

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