◆プロフィール
株式会社プレイド
「データによって人の価値を最大化する」をミッションに、顧客一人ひとりのデータを人として可視化し、その人の今にあった体験を届けるCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」を提供。
その他、CXにフォーカスを当てたビジネスメディア「XD(クロスディー)」や、最先端のCXを学び体験できるカンファレンス「CX DIVE」も展開している。
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◆インタビュイー
Marketing 稲葉 航様
プロダクトマーケティングを中心に、クリエイティブ、セールス、カスタマーサクセスまでを行う。(写真:右)
Marketing 中城 千佳様
主にオウンドメディア「CX Clip」の企画制作、リードナーチャリング・コンテンツマーケティングを行う。(写真:左)
マーケティングチームで常に意識していることは何でしょうか?
―Marketing 稲葉航様(以下 稲葉様)
マーケチームに限らずではありますが、CX(顧客体験 カスタマーエクスペリエンス)をもっと世の中に広める”マーケットデザイン”を行う事です。
弊社が提供している、KARTE(カルテ)は、顧客一人ひとりの行動データを人として捉え、その人に合わせた自由なコミュニケーションを実現するCX(顧客体験)プラットフォームです。

CX(顧客体験)プラットフォーム KARTE(カルテ)(https://karte.ip/)
KARTEは、 2018年4月にプロダクトのリブランディングを行っています。
リブランディング前は、「Web接客プラットフォーム」と表現していました。その「Web接客」という言葉も我々が作り出して普及していったものではありますが、プレイドが意図しない意味や実態へと拡大してしまいました。
「Web接客」という言葉は、デジタル時代の顧客体験において実店舗における良質な接客のような世界観、サイトに来てくれた顧客一人ひとりを「人軸」で把握し、顧客に合わせた体験を提供することを目指して作り出したものでした。
しかし、いつしか顧客を「人軸」で理解する文脈が弱まり、「Web接客=ポップアップやチャット」というアクションのイメージが強く定着していきました。同時に企業は、顧客目線に立つことから遠ざかるという課題に直面しています。
この出来事がをきっかけに、KARTEの想いと世の中のニーズとの乖離を無くし、あらためて提示するためには、どの様な言葉や概念がいいのかを熟慮した結果、「CXプラットフォーム」という形でリブランディングを行いました。
しかし、「CXプラットフォーム」と決めたものの、CXの認知度は日本ではほぼ皆無。市場自体も広げつつ、CXを認知してもらうことが急務となりました。それを最優先として、マーケティングもブランディングも全体的に変えていきましたね。
CXという言葉の認知のためにどのような工夫をなさったのでしょうか?
―稲葉様
サイトは特にですが、「知る」にフォーカスする内容で全てを語るようにしていました。
本来のWeb接客である、「顧客を知った上で」の部分を強調する表現をこころがけ、「知ったからこそ合わせられる、合わせたからこそ、また知ることが出来る」という文脈で全てを語るようにしていきました。
広告等のコピーも、CXの認知がされていない狭い市場の中で、一言でKARTEを伝える事はとても難しい。特定の機能にフォーカスしたり、一言キラー的な言葉や絵のみで伝えたりしてしまうと、勘違いを生む可能性が出てきてしまいます。
なので、特に最初の数カ月間は、ロゴやKARTEのコンセプトムービーと「CXプラットフォーム」といったコピーだけをひたすら出して「認知」してもらうことに注力していました。それを見た方がイベントなどで声をかけてくださり、初めてフェイス・トゥ・フェイスで説明させていただく。
とにかく本意ではない理解をされないように知ってもらう工夫は特に意識して行っていましたね。
それもあって広告運用もインハウス化したのでしょうか?
―稲葉様
KARTEは幅広い複雑なプロダクトであり、今も常に進化していますし、先述したCXの認知度の課題もあります。なので、我々もどのような表現が伝わるのか、手探りでやる必要がありました。
チームでよいと思ったものを回してみて、手ごたえを感じつつナレッジをためたい意図もあって、一部アウトソースしているところもありますが、当初から社内での運用を大事にしています。
広告はオーダーの仕方にもよりますが、獲得や数字に寄ったものが作られがちで、そこに対する改善も運用する人間に俗人化してしまう傾向があります。プレイドが目指したい「認知のされ方」や「伝えたい思い」は数字だけではないと思っています。
もちろん数字は大切なので見てはいますが、その過程とかやり方の方が大事であって、いたずらに数字を上げるための内容であるとか、あおるような内容はKARTEで実現したい世界観とは相反します。そういう意味でも社内で考え実践することが重要だと思っていますね。
これは、CX Clipも同じで、「オウンドメディア」「コンテンツマーケティング」というと、集客やコンバージョン数を稼いでリードや名刺の数を増やす…みたいになりがちですが、その部分よりマーケットデザイン。メディアを通して普及を行うことが大切だと思っています。
CX ClipではコンテンツをCXの認知へどの様につなげているのでしょうか?
―Marketing 中城千佳様(以下 中城様)
KARTEのオウンドメディアである「CX Clip」では、顧客体験の向上を目指したKARTEご利用企業様の事例をフルオープンで掲載し、CXの知の総量を上げる事をモットーにコンテンツを提供しています。
クライアントとなる企業がエンドユーザーに対していい体験を届けていくことが、プレイドのミッションである「データによって人の価値を最大化する」ところへつながっていきます。
メディアが集客・送客に効果的であることは望ましいですが、記事にたどり着いたユーザーには、求めている内容が記事に書かれていて納得感を持って読了してもらいたい。そのために、記事を量産するよりも、一本一本内容の詰まった記事を作成することを優先しています。
CX Clipは、企業にとって理想の顧客体験を考えるきっかけを創れるよう、愚直に一つ一つの記事を届けたい人に確実に届く内容にしたい想いが強いですね。
―稲葉様
我々のチームはチャネルの専属がないので、わたしもメディアに関わりますが、CX Clipについては、「PVはもちろん大切だけど、それは本質的な話ではないのかもしれない」と思っています。
たまたま読んだ記事が心にささって、CXを知ったり、考えたりする事につながったとすれば、たとえ1記事で離脱したとしても、それはそれで成功なのかもしれませんね。検索した体験そのものが大切なので。
なるほど。ちなみに「チャネルの専属がない」とは?
―稲葉様
「中城はCX Clip」のような大まかな担当はありますが、全員がプロダクトマーケやマーケットデザインのことを考えているので、基本的に専属ではなく皆一緒に動きます。
これもマーケチームだけに限らず会社全体で、上司・部下や、広報・企画・エンジニアとか職種も関係なく、フラットにコミュニケーションをとっています。
お客様に対してKARTEを正しく、魅力的に伝えて興味を持っていただく。その上で使っていただくことが目的なので、誰がやるではなく、皆で最終的な目的に向かって動いていく。組織の壁がなくて、やりたいことが出来るプレイドの環境だからこそ出来るし、プレイドらしい特徴なのだと思います。
―中城様
例えば、UI・UXデザイナーが、クライアントに直接ヒアリングに行って、生の声をプロダクトに反映したりしています。
また、チーム外のエンジニアの提案を発端に、フォームの入力数をしぼってみたら、劇的にCVRが上がった事もありました。周りのメンバーからアイデアをもらって、すぐ取り入れて翌日には結果が出ている事も実際にあります。
思ったことはとりあえずやってみて、結果を見て継続するのか変えるのかの判断をしていますね。
スピード感がありそうですね。コミュニケーションロスは無いのでしょうか?
―稲葉様
あまりないですね。極端な例ではありますが、ものによってはコミュニケーションをあえてとらないこともあります。
プレイドには「承認より謝罪より事後承諾」という文化があります。
簡単に言うと、「課題に向き合うのに、誰かに許可をもらう必要はない。自己判断でどんどん動いていこう」というマインドです。
もちろん事前承認が必要な事もありますが、それ以外で自信をもって「やるべき」と思えるものは、誰かに相談しなくても進めることは可能です。ただし、その結果や学びは社内に共有する。仮に失敗しても、謝るよりもそこでの学びを次に活かせるようにしておくことの方が大事です。一方で、その学びもずっと信仰する訳ではなく、その学びすらも壊して次に進んでいくメンタリティがプレイドらしさでもあります。
ちなみに、「同じ様なこと考えていましたメモ」がいたるところにあったり、実行後に、「あれ!やっちゃったの!?」とかはたまにあります(笑)。 トータルでスピードや効果が上がれば全てOKが共通認識です。
今後取り組もうとしていることはありますか?
―稲葉様
今後も含め、常にむき合わないといけない事は、CXやKARTEの認知です。
プレイドが伝えたい顧客体験は普遍的であるとは思いますが、まだ知らないお客様の方が圧倒的に多い。そこに対するマーケットデザインは引き続き大きな課題でもあります。
企業と顧客がサービスに接するポイントは一瞬ではないので、「この部署やロールの人はKARTE使う」ではなく、「誰であってもKARTEを使う」事がベストな状態だと思います。そういった意味で、部署や顧客との壁を溶かしていきたい。
顧客目線であらゆるものを考える「CX」を実現するプラットフォームになっていくためにも、イベントやPRを含む色々なマーケティング手法やニュアンスを合わせ、正しく適切に、魅力的に伝えることが大きな役割であると思っています。