ビジネスでは「相手からの承諾(OK)」を得ることができれば、商品・サービスを売る目的(コンバージョン)を達成できます。
ビジネスでも恋愛でも自分の要求を承諾してもらうことは簡単ではありませんが、「フットインザドア」の心理学テクニックを効果的に使えば、承諾率アップの可能性が格段に高まります。
「フットインザドア」とは?
「フットインザドア」とは、小さな要求を承諾してもらうことができれば、段階的に大きな要求にも承諾してもらいやすくなるという営業(セールス)の心理学テクニックです。
「フットインザドア」という言葉は、「セールスマンが商談を続けるために、ドアを閉められないように片足をドアの内側に入れる動作」に由来しています。「セールスマンは顧客にとにかく話を聞いてもらうことさえできれば、流れで商談を成功させやすくなる」という営業の経験則に基づく技法です。
フットインザドアは「段階的要請法」とも呼ばれるように、まず断りにくい「小さな要求(簡単な要求)」を提示して承諾してもらい、段階的に要求のレベルを上げることで、本題である「大きな要求」を承諾するように誘導していく交渉術なのです。人はいきなり「大きな要求」を突きつけられると、警戒したり負担に感じたりして、承諾することはまずありません。
しかし、「3分だけお話を聞いて頂けますか?」「無料ですので、この試供品をお試し頂けませんか?」など簡単に実行できる「小さな要求」であれば、断るのも悪いと思って承諾しやすくなります。
フットインザドアを有効にする一貫性の原理
「フットインザドア」の心理を生み出す原因の一つが「一貫性の原理」です。
「一貫性の原理」とは自分の行動・考え方・イメージを一貫させて矛盾のないように振る舞いたいという人間の無意識的な心理傾向で、コミットメント(行動)することで一貫性の原理は更に強く働きます。
「フットインザドア」では「小さな要求」を承諾した時点で「相手にイエスと答えた自分の立場」が作られ、その後に「大きな要求」をされるとその行動の一貫性を維持しようとして断りにくい心理状態になってしまうのです。
以下で、フットインザドアの具体例を紹介します。
1、フットインザドアを活用したアパレル販売の具体例
店員A:「どのようなお洋服をお探しでしょうか?」
お客B:「春物のコートを少し見てみようと思って…」
⇒会話に応じた時点で、店員Aの小さな要求を承諾したことになります。
店員A:「それでしたら、今年はこのコートが流行りで売れてますよ。よろしかったら、試着されてみませんか?」
⇒試着した時点で、店員Aの次の段階の要求を承諾しています。
お客B:「うーん、デザインは好きなのですけど、色が派手すぎるかも…」
店員A:「同じコートでお色違いもございますので、幾つかお持ちしますね。」
店員A:「お似合いですね。どれになさいますか?」
⇒ここまで複数の小さな要求を承諾したため、無意識に「イエスと答える行動」を一貫させようとして、試着したコートのどれかを購入する確率が高くなります。
2、フットインザドアを活用したデートの誘い方の具体例
男性A:「Bさんは、普段カフェとか行く?」
女性B:「時々、スタバに行くよ。」
⇒会話に応じた時点で、簡単な要求を承諾しています。
男性A:「スタバはどんなメニューがおすすめ?」
女性B:「私は甘いコーヒーフラペチーノが好きかな。」
⇒好きなメニューを答えた時点で、次の段階の要求を承諾しています。
男性A:「フラペチーノを一度飲んでみたいけど、お洒落なカフェは行ったことなくて…良かったら一緒にスタバに行かない?」
⇒女性Bはすでに幾つかの要求を承諾しているため、言動に一貫性を持たせようとして断りにくい心理状態になり、一度はカフェデートをしてくれる可能性が高まります。
Webマーケティングを成功させるためにフットインザドアを活用してみよう
「フットインザドア」をWebマーケティングで活用する場合には、ターゲット層の「小さなコミットメント」を引き出すことがポイントになります。
ブログやメルマガ
「SNSのいいね!ボタン」を押してもらうことや「メルマガ登録」をしてもらうこと、「コメントの書き込み」も有効なコミット(小さな要求の承諾)です。人は実際にコミットすれば「自発的・好意的なスタンス」を一貫させやすくなり、商品購入の機会も増えてきます。
ビジネスレター
コピーライティングでも、「自宅で座ってできる筋トレに興味ありませんか?」「食欲を我慢しなくても結果を出せるダイエット法があります」といった「読み手の小さな同意」を得る文面から書き始めて、読者の一貫した興味・ニーズを維持する「フットインザドア」の手法は有効です。
ネット通販
「1週間無料サービス・試供品の提供」へユーザーをコミットさせて、適切なアフターフォローをすることで、フットインザドア活用の売上アップにつなげられます。
LP
ゴールを「お試し・体験」に設定した上で、お試し商品を実際に購入してもらうためには、「電話・メールによるアフターフォロー」が重要になります。特に電話で「お試し頂いた商品はいかがでしたか?」と質問されると、無料で使った顧客は「否定的な回答」は返しづらく「好意的な感想」を伝えることで、小さな要求を承諾した形になります。その流れで試した商品の購入を勧めれば、顧客は一度好意的な感想を述べた手前、断りづらい心理状態になり、購買率(コンバージョン率)アップに至りやすいのです。
営業、マーケティング、人間関係。用途がさまざまなフットインザドア
「フットインザドア(段階的要請法)」は「一貫性の原理」を応用した交渉術で、小さな要求を承諾してもらうことで大きな要求にも承諾してもらいやすくなります。相手が同意しやすい簡単な要求にコミットしてもらうことから始めるフットインザドアは、営業や販売・Webマーケティング・恋愛関係・コピーライティングなどさまざまな分野で活用できるのです。