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保有効果とは|「捨てられない」あの断捨離の難しさをマーケティングに活用

投稿日:2019年7月16日 更新日:

 

部屋で断捨離中、何年も着ていない服を捨てられない、二度と読まないだろう本を捨てられない、という経験はありませんか?
この断捨離できない心理には「保有効果」が働いています。この心理を上手く活用して、マーケティング・広告の効果を高めていきましょう。

 

保有効果とは?

「保有効果(Endowment effect)」とは、現在所有している物・環境の価値について、それを所有していないときよりも高く感じ、その物・環境を手放すことに強い抵抗を感じる心理効果です。
1970年代に、経済学者のリチャード・H・セイラーによって提唱されました。
「保有効果」は、「新しいものを手にした時に得られるメリット」よりも「今持っているものを失うデメリット(現在の環境を失うデメリット)」を大きく感じる心理傾向として理解できます。

 

保有効果の実験


カーネマンとトベルスキーの心理学実験では、「大学のロゴ入りマグカップ」をAグループの学生に与えて「いくらなら売るか?」と聞いて、Bグループの学生には「いくらなら買うか?」と聞きました。

すると驚くことに、Aグループの学生は「(平均して)7.12ドルなら売る」と答えたのに対し、Bグループの学生は「2.87ドルなら買う」と答えたのでした。
自分が保有しているマグカップの主観的価値が、他人が思っている価値より2倍以上も高いという「保有効果」がこの実験で確認されました。

皆さんも、自分が所有するチケット・車やバイク・楽器・コレクション・思い出の品に、こういった保有効果を感じた経験があるのではないかと思います。

 

保有効果が生まれる原因

保有効果は、今現在の環境・状態をよほどのメリットがない限りは変えたくないという「現状維持の法則※」を生み出す要因にもなっています。

※現状維持の法則:人は今の環境・状態を変えるコストやリスクを実際以上に大きく感じやすいため、よほどのメリット・必要がない限り、現状維持の行動を取る傾向にある、という心理

 

 

「保有効果」が生まれて「現状維持の法則」が働く原因について、次の3点を上げることができます。

1. 所有して使い続けたものに「愛着・思い出」を感じる

2. 新しく手に入れるメリットよりも、今持っている物・環境を失う損失のデメリットを大きく感じる(プロスペクト理論に由来する損失回避)

3. 自分の感じる主観的価値が誰にでも通用するはずという認知バイアス

 

保有効果のビジネス・日常生活・恋愛の例

ビジネス

洋服の試着では、ほんの短い時間だけでも、自分の気に入った洋服を試着してその洋服を所有した感覚を覚えると、「手放したくない」という保有効果が起きるため、購買率が上がります。

健康食品などで無料サンプルを提供して、少しでも元気になったような実感があれば、現状維持の法則が働いて、「健康食品をやめると調子が悪くなるかもしれない」という気持ちになり継続購入につながりやすいのです。

 

日常生活

例えば、10年以上愛用しているグランドセイコーを持つ人に、「最新のロレックスと交換しませんか?」とお得な交渉を持ちかけても、ほとんどの人は今ある時計への愛着・思い出によって交渉に応じません。
また、いったん所有した洋服や家具、本などにも「保有効果」が働いて捨てることを苦痛に感じるので、意識して断捨離しないと家の中にどんどん物・ゴミが溜まっていきます。

 

恋愛・夫婦関係

いったんカップルが成立して恋人(配偶者)になると、そのパートナーの価値を実際よりも高く感じやすくなり、恋愛・結婚(家族)の現状を変えるリスクやコストを大きく感じます。
「保有効果」で「新しいパートナーを手に入れる喜び」よりも「今のパートナーを失う苦しみ」を大きく感じるので、恋愛・結婚には「早く相手を手に入れた者勝ち(同程度の魅力の人だと略奪婚は困難)」の傾向があるのです。

 

「保有効果・現状維持バイアス」のマーケティング活用方法


「保有効果」をマーケティングに活用するもっとも簡単な方法は、「顧客に自社の商品・サービスをまずお試ししてもらうこと」です。

「安心してお試しできるサービス」で「仮想的な所有感」を体験してもらえば、「保有効果+現状維持の法則」が働いて、その商品やサービスを購入(継続)してもらいやすくなります。

例えば、キューサイの青汁やサントリーのグルコサミンなどの健康食品(サプリメント)では、「無料お試し期間」を設けていることが多いです。試しに1週間~1ヶ月くらい顧客に無料サンプルを提供して、「実際の健康改善・元気になる感じ」を実感してもらえれば、その効果を手放したくない「保有効果」で継続購入につながるからです。

最近では、NetflixやHulu、Appleミュージック、Spotifyなどの定額配信(サブスクリプション)でも、無料視聴期間を準備して「保有効果・現状維持の法則に基づく継続利用」を促進しています。Webサービスやジム、ヨガ・英会話などの教室(スクール)など「定額サービス」のビジネスでも、数週間~1ヶ月程度の「無料お試し期間」を設けることで、「保有効果による継続利用の顧客」を増やしています。

 

返品保証(返金保証)で安心感を与えよう

「保有効果」は見込み客にいったん商品・サービスを手に取ってもらうことで発揮されます。購入リスクを下げる「返品保証・返金保証」をつけて、まず自社の商品・サービスを購入してもらうことを目指しましょう。

ダイエット効果がなければ全額返金のライザップ、商品にご満足できなければ返品保証の羽毛布団・家電、美味しくなければ返品OK(返金OK)の飲食店などのマーケティングでよく使われている手法ですが、「保有効果+返報性の原理(好意・良い商品にはクレームをつけにくい)+返品・返金を求める手間」で、実際はよほどの粗悪品でなければ返品保証(返金保証)の申請はありません。

 

 

「お試し」で、保有効果を引き出す

「保有効果」とは、自分が所有している物・環境の価値を実際よりも高く感じて、手放したくないと思う心理効果です。
保有効果によって現在の状態・環境をできるだけ変えたくないという「現状維持の法則」も働きます。

「保有効果」では、まずお試しで自社の商品・サービスを使ってもらいましょう。そうすると購入・継続利用してもらいやすくなります。

 

 

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宮田 あゆみ(株式会社インフォデックス)

beehave編集部
2017年 株式会社インフォデックス入社。
beehaveの編集部として企画・ライティング・ディレクション・SNS運用を担当。

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