消費者心理 編集部コラム

クルマのサブスクは成功する?トヨタ「KINTO」から考察

投稿日:2019年11月28日 更新日:

 

トヨタの「KINTO(キント)」は自動車メーカー自らが「車は買うもの、そのお考えお古いかと…」と挑戦的なCMを打ったサブスクリプションサービスです。
「車のサブスク」は年々増加中。KINTOはその中でどのターゲットのどんなニーズを満たせるのかを考察してみました。

 

クルマのサブスクリプションサービス「KINTO」とは?

トヨタは年間1060万台以上の車を販売する世界トップの自動車会社。
そのトヨタグループが「車を販売しない新規ビジネス」として立ち上げたのが、孫悟空の筋斗雲に由来する「KINTO」です。

KINTOは「KINTO ONE」と「KINTO SELECT」というコミコミ定額のサブスクを展開しています。

●KINTO ONE
3年間、アクアやプリウスなどのトヨタの新車に乗れる。月額43,450円~

●KINTO SELECT…
6ヶ月ごとに新車の色々な種類のレクサスに乗り換えられる。月額198,000円~

 

「高関与商品」のクルマとサブスクの相性はどうなのか?

サブスクリプションはNetflixやHulu、Apple Musicなど音楽・動画のジャンルではすでに主力になっている「定額使い放題のサービス」ですが「クルマとサブスクの相性」は未知数です。その理由は、クルマが「高関与商品」であるからです。

 

「高関与商品」とは?

「高関与商品※」とは「購入頻度が低くてこだわりが強い高額商品・耐久消費財」や「所有することがステータス・自己表現手段になる高額商品」のことです。購入に至るまでに「商品に関する情報を多く集めて、比較する」人が多いことが特徴です。

クルマは住宅と並ぶ代表的な高関与商品です。そのためクルマに対する「所有することのステータス性」や「自己アイデンティティ(自己顕示)としての所有欲」がサブスクに踏み込む際のハードルになる可能性はあります。

サブスクは「サービス・製品の使用頻度が多い人」や「維持管理のコストが高い製品」ほど、コスパが高まる傾向があります。
「車の所有」と実質的に変わらない「クルマのサブスクの正しい情報」を顧客に認知させることで需要は高まります。

 

参考

H.アサエルの購買行動分類と高関与商品のクルマ

H.アサエルは「製品関与(購買関与)」と「ブランド間知覚差異」の2軸で、以下のように消費者の購買行動を4パターンに分類しています。

 

KINTOのターゲットを分析


では、KINTOのターゲットはだれなのか、ターゲットに対してどのようなアプローチ方法をとっているのかを考察していきます。

まずターゲットですが、「KINTO ONE(トヨタの広範な車種)」と「KINTO SELECT(レクサスシリーズ)」はそれぞれサービスとの特長から以下の顧客層をターゲットにしていると考えられます。

●KINTO ONE……アクアなら月額43,450円で利用可能。20~30代の正社員層・公務員層・子育て世帯(子持ちの既婚者層)がターゲット。(ランクルプラドやハリアーなど高級な大型車もあるが)

●KINTO SELECT……高級車のレクサスを色々乗り換えられる。月額198,000円の高さから主に40~60代の高所得寄りの中流層・富裕層がターゲット。

 

若年層の「サブスク受容度の高さ・クルマ所有へのこだわりの無さ」がKINTOの商機を生む?

この2つのサービスのうちトヨタ側からすると単価の高いKINTO SELECTを推したいところです。
ただし、ターゲットである「トヨタの車を好む高所得者」には「高関与商品」の車をステータスや自己アイデンティティとして「所有したい人」が多く存在します。(※アサエルの購買行動分類における「情報処理型」)

そのため、彼らに「所有」から「利用」への価値観のリフレーミングを進めることが鍵になってきます。

そこに一躍買うのがKINTO ONEとそのターゲット層です。20~30代若年層は「サブスクの理解度」が高く「クルマ所有のこだわり」も弱い特徴があります。その特徴から「KINTOのサービス内容・月額コスト」に納得すれば、若年層の方が「クルマのサブスク」を前向きに受け入れる可能性がありそうです。

 

●若者の車離れ…買いたくないが5割超え?
https://matome.response.jp/articles/1519

●若者の車離れの理由とデータから見る若者の車離れ
https://www.kuruma-sateim.com/market/young-car-away/
●車離れが分かるデータ・理由と原因・若者が多いのか?
https://carby.jp/car_100504/car_100517/1031683

 

若年層の「クルマ離れ」は意識調査からも明らかですが、「20代の既婚男性」に限れば、76%が車を買いたい(家族で車を使うニーズがある)と答えています。「既婚者・子育て世帯(家族持ち)の若年層」は、月額コストが予算の範囲内であれば、十分にKINTOのターゲットになり得ます。

 

クルマのサブスクは成功するのか?新たな顧客層獲得の可能性

「不協和解消型」の若年層にアプローチできれば、クルマのサブスクの市場が広がる

KINTOなどクルマのサブスクは、アエサルの4象限における「不協和解消型」にあたる人たちも顧客にできる可能性をもっています。

「不協和解消型」の若年層は、「車のブランドについてよく知らないが、車を使うニーズが出てきた層」になります。
今の車は「技術・性能の向上やHV普及によるコモディティ化」が進んでいるため、車に詳しくない若い人だと、どの車種が自分に合っているのか(買った後で後悔しない車)を選びにくくなっています。

更に「クルマ購入後の後悔・迷い・維持費の高さ・SNSの評価」などによる「認知的不協和(買ったクルマの品質や評判が良い・悪いという二つの認知の対立)」を推測することでクルマ購入に消極的になります。

しかしサブスクなら「契約後にそのクルマに納得できなければ低コスト(安価・無料)で解約できる」や「コミコミの月額以外の料金は一切不要」の特長があるので、認知的不協和をスムーズに解消できます。

クルマのサブスクには、「納得できないクルマのローンを払い続ける失敗感」や「ローン以外の車検・税金・任意保険・メンテ費などの追加負担」にまつわる「認知的不協和」を解消してくれるメリットがあるのです。
これによって「特にブランドにこだわりがなく、これから車を購入しようとしている若年層」にアプローチできれば市場が広がる可能性があるといえます。

 

コモディティ化した市場に「サブスク」はどう働く?

自動車市場はすでに成熟しており、マーケティング効果は限定的で国内販売台数は約550万台で頭打ちになっています。
しかしKINTOのようなクルマのサブスクサービスは、「若年層の共感・認知的不協和の解消」と「中高年層・富裕層のリフレーミング効果」に訴えることで、新たな顧客層の開拓を目指しているのではないでしょうか。

関連URL:https://kinto-jp.com/

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