今回は、営業やマーケティングの現場で何気なく使われている「アンカリング効果」という心理効果を紹介します。
営業には、価格付けが大切です。誰しも、高く買ってほしい、大きな売上がほしいと願うもの。その価格交渉時に使える心理テクニックです。
アンカリング効果とは?
アンカリング効果とは何か
アンカリング効果とは、先に提示した数字や情報が、判断の基準に影響を及ぼす傾向がある、という現象です。
アンカーとは船を係留する錨のこと。先に出した数字や情報がとアンカーとなって、わたしたちの認知や判断に影響しているというものです。
マーケティングや営業現場で非常によく使われています。
アンカリング効果の例
プライスタグを思い浮かべてください。例えば、元値が4,000円ものを、斜線で消して2,980円に修正しているシーンをよく見かけるのではないでしょうか。
あれは、「元値は4,000円だったのに!」と思って、消費者が買ってしまい、さらには満足度も高まってしまうという心理効果なのです。
人は誰しも、得をしたい、損をしたくないという気持ちがあるものです。そしてそれは、非常に強い感情です。
よって、このアンカリング効果は誰も損しない、魅力的なテクニックなのです。
営業パーソン必見!アンカリング効果の使い方
価格交渉術としてのアンカリング効果
アンカリング効果は値引きによく使われている、と解説しましたが、値上げにも使うことができます。
例えばビジネスにおいて、商品やサービスを売りたいと考えたとき、交渉事が発生します。
誰しも、安売りしたいとは思わないものです。
ただし、サービスが爆発的にヒットする前は、どうしても自分のサービスが「高すぎるのではないか」という不安にかられます。
それでも、大きなお金を払ってもらえることは、自信につながりますし、今後のサービス品質の向上にも直結します。
そこで、アンカリング効果を意識して使いましょう。
商品やサービスを高く買ってもらうコツ、それは「相手に価格を聞くのではなく、自分で価格を提示する」ということです。
例えば、メールで「いくらで請け負っていただけるか、教えてください」という問い合わせがやってきたとします。
そこで、「ご予算はいくらですか?」と聞いてしまうことがあると思います。とくに駆け出しのころは、うかがってしまいがちです。
しかし、そんなときこそ、先に数字を出しましょう。先に出した数字が、交渉の基本価格となります。高すぎる場合は、交渉が入るものです。まずは低く見積もらず高めに設定するのも1つのコツです。
マーケティングで使えるアンカリング効果
マーケティングにおけるアンカリング効果
マーケティングでもアンカリング効果は使われています。
それはご存知コンビニやスーパーです。非常に身近な世界ですが、特に1920年代のアメリカでスタートしたスーパーは、売るための原則が徹底的に研究されています。
スーパーマーケットの例
激安系スーパーは、たまごが98円、豆腐が30円、牛乳が160円など、非常に安い設定になっています。
しかし、本当にすべてが安いのでしょうか?よく見てみると、実はオリーブオイルが980円の場合があるなどと、意外な高価格帯の品物も販売しているのです。
ただし、たまごが98円など、消費者がどうしても買わなければならない商品をとても安く設定することで、全体的に安いというイメージをもたせることができます。
同時に、これは「あなたの味方です」というメッセージを送ることにもなり、企業イメージの向上としても効果的なのです。
二重価格表示の注意
ただし、リーガルリスクが存在するのが、このアンカリング効果のすごさを物語っています。
つまり、あまりに効果がありすぎて、法律で二重価格表示が法律で違反されているのです。
最初に、「4,000円のものを2,980円と設定し、安さを印象づける」と書きましたが、そこで「10万円のものが2,980円」などと、極端な表示を行うことは、景品表示法に抵触してしまうことがあります。気をつけなければなりません。
今回は、アンカリング効果についてみてきました。
普段何気なく行っていた行動なのではないでしょうか。この心理効果を意識して利用すると、ビジネスにおいてのプライシングや商談を勝ち抜くこともできます。
最初に決めた数字が、基準になります。サービス、商品の価格は、先を見越してアンカリングしておくことが大切です。