アフォーダンス理論とは、「人と環境との間にある行動を誘発する関係性」のことです。
これを利用すると、Web領域でも「商品の特徴・デザイン」で人の行動を誘発することができます。
今回は、アフォーダンス理論を、シグニフィアとの違いや、身の回りの例を用いながら解説していきます。
人の行動を誘発するアフォーダンス理論とは?
アフォーダンスとシグニファイアの違い
アメリカの心理学者ジェームズ・J・ギブソンが考案した「アフォーダンス(affordance)」とは、環境が人(動物)に対して与える「情報・意味」のことです。
アフォーダンスというギブソンの造語の元になっているアフォード(afford)には「与える・提供する」の意味があり、環境(モノ)は人に対してさまざまなピックアップできる情報(意味)を与えてくれているのです。
椅子のような平面の板は「座れる」の情報を与え、ドアノブのような形状の取手は「回して開けられる」の情報を与えていますが、アフォーダンスはあくまで「人とモノの間の関係性」を指します。
環境(モノ)をどのように使えば良いのかを決めてしまうほどの特徴・デザインを示すことは、「シグニファイア(signifire)」と呼ばれます。
つまり、人が簡単あるいは安全にその商品を使えるように、意図的にデザインすることがシグニファイアです。マーケティングや広告の業界では、アフォーダンスというよりシグニファイアによって自社製品の利便性・安全性を売り込んでいる面があるのです。
「商品・Webサイト・建築物などのデザイン(見かけ)」によって、人は過去の経験と照らし合わせてその意味を読み取り、半ば無意識的に特定の行動をピックアップ(採用・選択)してしまうというのがアフォーダンスです。
アフォーダンスは反射的な行動を誘発するので、マーケティングや広告でも上手く応用すれば、購入行動・広告のCTR(クリック率)を増やすことができます。
アフォーダンスで誘発される人と商品の関係
プリウスやiPhoneの大ヒット商品と行動のアフォード
人と商品(モノ)の間にある行動を誘発する関係性をアフォーダンスといいます。新商品や新サービスの開発・普及によって、私たちは過去よりもずっと多くの情報を環境(商品)からアフォードされています。
例えば、トヨタのプリウス(HV・PHV)や日産のリーフ(EV)をはじめとする最近の自動車は、昔のようにキーをハンドル下にあるシリンダー穴に差し込んで回転させる方式を廃止して、ブレーキを踏みながらスタートボタンを押してエンジンをかける方式に変更しています。
プリウスの小さなシフトレバーは更に、指で軽くDやRに位置を変えるだけの独特な情報をアフォードしています。
ボタンのデザインは人間に「押す」という情報を強くアフォードします。車に家電製品のようなエンジンのスタートボタンを付けたことで、少しずつ車のエンジンはキーを鍵穴に差し込むという旧来の常識が変わりつつあります。
そもそも、現在の車のキーはかつての金属の棒状のものがほとんど無くなり、キーレスエントリーでボタンを押す鍵に変わってきています。
今、誰もが当たり前のように使っているスマートフォンも、アップル社の故スティーブ・ジョブズがiPhoneという革命的な商品を考案していなければ、「全面タッチパネルの携帯電話」が人のタップやスワイプという動作を自然に引き出すまでに、まだまだ長い時間がかかったでしょう。
コンビニで反射的に押す「お酒・タバコの年齢確認ボタン」も、タッチパネルが押す行動をアフォードします。プリウスやiPhoneのように人に規定の意味をアフォードできる商品は、以前の市場を一変させるような大ヒット商品になることが多いのです。
Web領域へのアフォーダンス理論の応用
騙しリンクはCVRを下げて逆効果!
以前は下記の記事で、アフォーダンス理論のWeb領域への具体的な例を取り扱いました。
今回はサイトの「信用」を下げてしまうアフォーダンス理論を紹介します。
Webデザインにアフォーダンス理論を応用する場合には、自社がぜひ閲覧してほしいコンテンツや自社の利益になるWeb広告をクリックする行動を引き出したいと思うはずです。
この目的を実現するためにアフォーダンス理論が示唆する「正解のWebデザイン」とは、どんなものなのでしょうか?
答えは「個性的な凝ったWebデザイン」とは対極の、「迷わないWebデザイン」になります。
ただし、あくまで自社が見てほしいコンテンツやWeb広告のCTR(クリック率)を高めるためには、一般的な慣れたデザインが良いということであり、「個性的な凝ったデザインが好きというファンやリピーター」が付けば前提条件は変わります。
ユーザーを迷わせずにCTR(クリック率)を高めるスタンダードなデザインとは、「クリックできる文章・ボタンを明確にしたデザイン」のことです。
例えば、「リンクは青文字・下線にする」や「立体感のある右矢印のあったボタンを配置する」「文章の文字色を統一する」「検索ボックスに虫眼鏡マークを付ける」などユーザビリティーに配慮したデザインが、ユーザーに「クリックできる場所」をアフォードしてくれるのです。
一方、Web広告の本来の目的は企業の商品やサービスを購入してもらうことですから、CTR(クリック率)を高めるために「実際の内容とは違う文章にリンクを貼る」ことや「コンテンツと見せかけて広告をクリックさせる」といった騙しの意味をアフォードするのは逆効果になります。
アフォーダンスを悪用した「騙しリンク・広告の誤クリック」は、CTRを一時的に高めてもCVR(コンバージョン率・購入率)とサイトの信用を下げるだけなのです。
まとめ
ギブソンが提唱したアフォーダンス理論は「人とモノの間にある関係性」を意味しています。Webデザインや広告では「ユーザーの慣れ親しんだベーシックなデザイン」がもっともクリック率を高めてくれます。
アフォーダンスを効果的に使って、潜在顧客のコンバージョンを引き出していきましょう。